天神北部を東西に横切る昭和通り、那珂川に架けられた西中島橋のほとりに、赤レンガ造りの古ぼけた洋館が建っている。
現代的な街並の中唯一時代から取り残されたようなこの洋館の重い扉を開けると、福岡の地で起きた数々の凄惨な事件にまつわる飼料が残されているという・・・・
思わせぶりな話はおいといて(^^;)
北九州市立美術館を出たあとは、天神にある「福岡市文学館」、通称「赤煉瓦文学館」へ。
お目当ては現在開催中の「福岡ミステリー案内」。
館内には、戦前の夢野久作、大下宇陀児、ご存じ松本清張、夏樹静子、赤川次郎といった大家から乙一に至るまで、福岡ゆかりの推理作家の紹介、そして福岡を舞台とした推理小説の案内が警察署の管轄ごとに紹介されている。
これがなかなか面白い。
観光ガイドに書かれている歴史が福岡のオモテの歴史ならば、ミステリの舞台として描かれているのはその裏面史の結晶のようなもの。ここで紹介されている数々の「事件」は、他県の人間にとってあまり知ることのできない福岡の影の一部分を示しているようで、面白い。
まったくのフィクションとしてのミステリーもあれば、現実に起きた事件を題材にしたミステリーも多い。
福岡俘虜収容所の収容された軍人の夫と会うために訪れた福岡の地で惨殺され、3日後夫も後を追い自殺した1917年の「イルマ殺し」事件はその嚆矢。夢野久作、火野葦平がこれを題材に短編を書いている。
逆に事実が小説を模倣したような事件もある。鮎川哲也「黒いトランク」は本格ミステリを代表する作品の一つだが、この翌年、福岡市の吉塚駅にて「黒いトランク」を地でいくような「吉塚駅布団包み死体事件」が起きている。
唐津・星賀を舞台にした1981年の「保険金替玉殺人事件」。殺されたと思われていた北九州の水産会社社長が実は真犯人で、露見後社長は自殺、というという推理小説を地でいく展開で、石沢英太郎、中村光至が小説化している。また犯人グループが社長と本妻、愛人の女性社員だったという特異性からか、崔洋一監督でポルノ映画にもなったらしい(「性的犯罪」・1983)
1983年、清川で起きた「ホテル月光苑放火殺人事件」も印象深い。事件そのものは保険金目当ての放火により、従業員が巻き添えになった、というものだが、全盛期には「博多の新宿」とまで言われた清川の衰退がこの事件の背景にあるのが興味深い。
清川周辺といえば、昔ながらの商店街の風情と、最近立てられたらしい近代的なマンション、ビルが混在する雑駁な印象しかなく、中州と張り合うほどだった歴史があるとはちょっと意外。膨張する天神に飲み込まれつつある地域、という印象だが、一歩路地に入れば、往時の面影がかすかにせよ残っているのかもしれない。
ミステリ好きとしては文句なしに楽しめる内容だったが、赤煉瓦文学館のレトロな雰囲気がそれに一躍買っていることも見逃せない。それこそとなりの部屋に美女の惨殺したいが転がっていても違和感なさそうな雰囲気だもん(笑)
まあホントに転がっていたらちょっと困るけど、サスペンスドラマのロケにでも充分使えそう。
昔は1階の一角にレトロ風の喫茶店があったが、現在は営業していないようだった。ちょっと残念。
入館無料でこれだけ楽しめるとは。推理小説ファン必見です
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福岡市文学館(赤煉瓦文学館)
福岡市中央区天神1丁目15-30
地下鉄天神駅徒歩5分
開館時間 10:00~19:00
休館日 月曜
福岡ミステリー案内 赤煉瓦館事件簿
開催期間 2006/12/1(金)~2007/1/14(日)
休館日 月曜 年末年始(12/28~1/4)
入館無料