いちばん初めにあった海
posted with amazlet on 07.06.06
加納 朋子
角川書店 (2000/05)
売り上げランキング: 75553
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久しぶりに読んだ加納朋子の作品。1996年刊行だから、比較的初期の作品にあたる。
「いちばん初めにあった海」と「化石の樹」。2つの連作からなる。
「いちばん初めにあった海」時折はさまれる挿話がなぞというにはあまりにあからさま、というかわざわざなぞめいた部分の種明かししているようで不審に感じるが、主人公が失っていた記憶を取り戻したとき、さらに隠された意図が明らかになる。この辺りは実に巧み。
「化石の樹」。なぞや秘密とは縁のなさそうな青年の語りで進む物語は、一見前作とはまったく違った印象。彼が知りあいの老人から託された古びたノートから始まる。
ノートに書かれた手記の真実が明らかになり、語りかける相手が明らかにされるとき、前の話とのリンクが明らかになる、という趣向が隠されている。。
両作品とも、大切な人を失った女性の喪失と再生の物語という点で共通している。悲しみに満ち溢れながらも、希望の光を感じさせるラストは読む人を優しい気持ちにしてくれる。
最近良く見かける「泣かせる」小説とは一味違う、じんわりと心に染み入るような感動はもっと評価されていいと思う。
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