ルース・レンデル「運命のチェスボード」

運命のチェスボード ウェクスフォード警部シリーズ
高田 恵子 ルース・レンデル
東京創元社 (1987/04)
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 月に一度(もないけど)の読書メモ。今回はルース・レンデル

 レジナルド・ヒルのダルジール、コリン・デクスターのモースなど、英国を舞台にした本格推理小説は台のお気に入りだが、レンデルの「ウェクスフォード警部シリーズ」もけっこう好きなシリーズの1つ。

 今回読んだ「運命のチェスボード」は、ウェクスフォードシリーズの第3作目。。

 まあ、謎解きは地味。といっても犯人は最後まで分からなかったのだが(汗) 「ビックリした」と言うより「あ、こういう風に終わらせるのね」という感じ。地味なりに複雑なブロットで飽きさせないように構成されているので、読みにくいことはあっても退屈と言うことはない。死体のない殺人、という雲をつかむような曖昧模糊とした状況から、薄皮をはぐように真実へ至様は、ミステリのお手本、といった感じ。

 今作でもっとも印象に残るのは、新人刑事マーク・ドレイトンのキャラクター造形。(当時の)最先端のファッションに身を包み、先輩のマイケル・バーデン警部からは眉をひそめられている。

 一見、刑事ドラマに必ず出てくるような型破りな新人刑事のような印象だが、心の奥では冷徹に立身出世を望むリアリスト。実際に仕事は如才なくこなし、主席警部のウェクスフォードからは気にいられている。バーデン警部がやっかむくらい。

 そんなドレイトンが悪い噂のある一家の娘と出会ったことから始まる悲劇。考えてみると救いのないラストは、後年の氏のサイコものを思い起こさせる。

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