水上勉 修験峡殺人事件

修験峡殺人事件
修験峡殺人事件

posted with amazlet on 06.07.18
水上 勉
角川書店 (1985/04)

 

 古本屋で発見したこの本。「雁の寺」「越前竹人形」などの代表作を持つ直木賞作家水上勉の名前と、恐ろしく通俗的なタイトルのギャップで思わず手に取った。

 まあ水上勉と言えば「飢餓海峡」という推理小説の代表作を持っているし、初期には本格推理小説家として活動していたようだが、だからといってこのタイトルは安直すぎやしないかと。

 内容はダム開発による辺境の地の荒廃を告発した社会派小説、熊野の風土描写に見るべきところはあるものの、正直ちょっと退屈。たいしたどんでん返しも起らず、単調に話は進んでいく。

 「飢餓海峡」が発表されたのはこの作品の後だが、すでにこのころから推理小説に対する興味は薄れていたのだろう。トリックやどんでん返しより、開発が元で生まれた人間関係のもつれが、クライマックスの熊野の山を飲み込む大山火事に至る情景を書きたかったのではないかな、と。

 それにしてもこの小説、元のタイトルは「黒壁」、昭和57年に角川文庫に手刊行されたのを期に、このタイトルに改題されたのだとか。元のままの方がよかったような。でもそうだったら手に取ることもなかっただろうな。


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1 Response to 水上勉 修験峡殺人事件

  1. 本格推理小説

    推理小説のなかではもっとも一般的でかつもっとも古典的なジャンルである。事件の手がかりをすべてフェアな形で作品中で示し、それと同じ情報をもとに登場人物(広義の探偵)が真相を導き出す形のもの。第二次世界大戦前の日本では、「本格」以外のものは「変格」というジ……

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