太田光「マボロシの鳥」

どうせならこっちの方もブログネタにさせてもらおう。

最初の作品が今ひとつ乗れず、2本目もぴんとこなかったのでそのままにしていたが、「KAGEROU
」を買ってきて未読を残したくなかったので、とりあえず読むことに。

好みもあるだろうが、講談調の語り口が面白い3作目「人類諸君!」から急に引きこまれた。。

「ネズミ」太田さんのエッセイは昔1冊だけ読んだことがあるが(タイトルは忘れた)、太田さんの少年時代がモデルなんだろうか。KYと言われようと自分の美意識を曲げない、非暴力主義的ひねくれ者の話はこの人らしい。

「冬の人形」は逆に「らしくない」話。この短編集自体がバラエティに富んでいるが、その中でも一番異端、といっても内容が悪いわけではなくて、むしろ一番ほろりと来た。短篇集なので1作品読んで買うか決めよう、という人は多いだろうけど、涙もろい人はこの作品は立ち読みしないほうが無難。

話によると、太田さんは向田邦子の大ファンで、この作品はそのオマージュらしいけど、こういう泣かせる話も書けるとは。ある意味一番驚いた一編

表題作、芸人を主役に据えていることといい、饒舌な語り口といい、一番「らしい」一編。「爆笑問題の太田光」が一番全面に押しでた作品というか、人気も一番高いようだが、個人的にはそこが逆に冗長に感じた。

といっても内容は哲学的で、難解。

帯の角田光代氏の推薦文「びっくりした(中略)私たちのあるべき世界は、もっと美しくてまっとうなはずだと。(後略)」というのは褒めているのか呆れているのか、なんとも判断しがたいところがあるが、一読するとさすがプロの視線は鋭いな、と。

「奇跡の雪」もそんな一面を強く感じさせる一編。中東(割に人名はスミレとかアザミとか日本人っぽいのが不思議だが)の無差別テロを題材にとり、内容は残酷なのだが、疑うことを知らない女の子たちの優しさ、世界に絶望した少年のやるせなさが心に迫る、深い読後感の残る好編。

2作目が出たら多分買い。次は長編も読んでみたいです。


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