スティーブン・ハンター「ダーティーホワイトボーイズ」


ダーティホワイトボーイズ
スティーヴン・ハンター・著 公手成幸・訳

極大射程 」に続くボブ・リー・スワガーシリーズの第2弾、と思っていたが、むしろ番外編みたいな感じで、前作との共通点はあまり、というかほとんど無い。スワガーも出てこないし。一体どこで出てくるのだろうと首ひねりながら読んでたよ(^^; 全く別の作品と考えて別に問題ない。。

あらすじを読んだときは血で血を洗うようなバイオレンスなものを想像していたが、まあ実際に相当バイオレンスでかなりの数の死人は出るが、特に中盤以降は脱獄囚ラマー・パイとパトロール警官バド・ピューティの因縁を軸に話は展開する。

追うものと追われるものの知恵比べという要素もあるが、それ以上に強く感じるのは両者の父性の対比。脱獄囚ラマー・パイが二人の子分と協力者の女とともに擬似家庭を築いていくのに対し、いかにもアメリカ的父親の典型のようなバドは実は部下の歳若い妻と不倫関係に走り、家庭崩壊の危機に陥っている。それぞれがアメリカ社会の陽と陰を表しているようで、またその2つの陽と陰がそれぞれに二面性を持っているようで、なんだか正義と悪が表裏一体、僅かな差に過ぎないと暗示しているような気がする。。

特にラマー・パイのキャラクターはとてつもなく強烈。悪の権化とでも言うような残虐ぶりの一方で、子分で知恵遅れの従兄弟のウォーレンに対しては慈愛に満ちた愛情を示す二面性、極悪ではあるがスジの通った悪党ぶりは、アメリカ的なマッチョ思想の行きつく先、極北といった趣が。

二人の絡みを重視するあまりか、ストーリー展開が偶然により過ぎているところがなくもないが、意外性に富んだストーリー展開は先が読めない。読み応え充分の一冊。

反面、女性キャラクターは今ひとつ印象に残らない感じ。どこか都合のいい存在、という感じで。これが女流作家だったら、バドはラスト、あんなもんじゃすまなかっただろうな( ̄~ ̄)

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