東京創元社 (2003/05)
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2003年度の「このミステリーがすごい!」海外編1位と評価の高かった1冊。
19世紀のロンドンを舞台にした歴史ミステリ。貴族の娘マーガレット・ブライアがテムズ河畔のミルバンク監獄の慰問に訪れるところから話は始まる。この監獄で出会った元霊媒師の女囚シライナ・ドースにブライアが心奪われ・・・・ というのが話の発端。
話の舞台は監獄のシーンと、ブライアの家庭でのシーン、それに監獄に入る前のシライナの回想?が思わせぶりに挟まる。
監獄のシーンはもちろんのこと、婚期を逃した老嬢(あんまりな表現だが、この当時のイギリスではこんな感じだったのだろう)ブライアにとってその家も心許せる場所ではなく、陰鬱な空気のまま、話は進む。
このブライアが、リベラルで進取の気質に富む性格のようなのだが、なんだか世間知らずのお嬢様のワガママ、といった感じで今ひとつ感情移入できないんだよねえ。
話が進むに連れ、女囚ドースへの思いが同性愛的な傾向を帯びてくるのだが、これが耽美的と言うより、なんだかちょっとイタいストーカーおばさんの妄想話聞かされているよう。もはや感情移入する以前に、嫌悪感すら覚えてくるのはどんなものかと。
主人公も痛いが、ラストの救いのなさも、またイタい。いくら感情移入しづらい主人公だからって、この仕打ちはないんじゃないか、と。同情はしたくないが、気まずい思いさせられるという感じ。
かといってストーリーテイリングに見所があるのかと言うと、どうかなあ・・・・ 中盤までは先の読めない展開で、期待を抱かせるのだが、結局くすぶったまま終わってしまった。ドースの回想シーンもあんまり意味なかったなあ。読む前にはロバート・ゴダードの如き大どんでん返しの連発を期待していたものの、蓋を開けると・・・・ まあどんでん返しには違いないのだが、「大」がつくほどでもなく、しかも単発でカタルシスにかける。カタルシスに欠ける上に救いもない、と言うことで、読後感も「気まずい」。
始終霧のかかったような陰鬱な世界観に魅力を感じなくもないのだが、だからといって「年間1位」とるほどの面白みがあったかどうか・・・・ 特にミステリとしてはね。
ゴシック調の雰囲気が好きな人には楽しめるかもしれないが、過度の期待はしない方が無難。特に鬱な気分の時はお避けになった方が無難です。
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