最近では、「佐世保バーガー」を名乗るお店が県外にも増えているようだ。東京の「ザッツバーガーカフェ」のように佐世保の有名店で修行して開いたところや、佐世保の有名店の支店、という形態をとっている店もあるが、まったく佐世保と縁のないお店もある。
今回の「佐世保バーガー認定制度」に関しても、こういった「佐世保と関係ない佐世保バーガー」を排除する意味でも必要、という声が結構多かった。
実際問題として、この認定制度がそういった佐世保バーガーを排除する能力を持っているのかどうか、という点はともかくとして、「佐世保バーガー」が全国各地に乱立することは、果たして非なのだろうか。
佐世保に、というか全国どこにでも、たいてい「広島風お好み焼き」のお店はある。この「広島風お好み焼き」個人的には「好きでも嫌いでもない」食べ物だった。まあおごって貰えば喜んで食べるが、自分でお金出してまで食べに行くほど好きではない、という感じ、だった。
だった、と過去形なのは、5年ほど前に当時当地に住んでいた親戚を尋ねて広島に訪れたとき。広島について、せっかくだから広島名物を、と訪れたのが、駅ビル内の広島風お好み焼きのお店。前述したとおり、お好み焼きは特にすきでもなく、どうせ広島に行ったのだから、名物のひとつくらい食べとかないと、というくらいの気持ちだったのだが。
出てきたお好み焼き。
今まで食べたものはいったいなんだったんだ、といいたくなるくらい、まったくの別物。とにかくすさまじく、美味い。
その後、広島で食べた味が忘れられず、福岡などで評判のいい「広島風」お好み焼きを食べてみたが、結局のところ自称広島風の域を出ていなかった。
近所の自称「広島風」を額面どおり受け取っていた自分が恥ずかしくなるくらいだったのだが。おそらく広島在住の人が九州のそこいらにある「広島風お好み焼き」を食べたら、「これは広島風ではない」と冷笑するか、場合によっては怒り出すのではないか。それこそ「勝手に『広島風』名乗られたら困る」という意見が出ても不思議ではない。
多分こういったケースはほか地域名物でもいくらでもあるだろう。まだ本場で食べたことはないが「大阪風お好み焼き」とか、香川の「讃岐うどん」とか。
僕の「広島風お好み焼き」のケースで考えてみると、たしかに「県外の粗悪業者」を排除したい、という理屈はうなずけないこともない。たしかにこのケースでは、県外の(というか、佐世保市内の)業者によって、広島風お好み焼きのイメージは実際より貶められていたことになるから。
だけど。
「名乗るのをやめさせる」事がはたして有益かといえば、必ずしもそうとは思えないのだが。
僕のケースでいえば、「広島風お好み焼き」のイメージはたしかに実際より貶められていたものの、本場(広島)に訪れた際に「食べるのをよそう」と忌避するほどの妨げにはならなかった。一般的な感覚でいえば「本場」のものに対してはそうでないものとは一味違うのでは、という期待が起きるからだ。
さらに、ほかにも牡蠣やらあなごめしやらいろいろとある広島名物の中で、「お好み焼き」をチョイスしたのは、ほかの名物より普段から耳にすることが多い、なぜなら佐世保にいても「広島風お好み焼き」というお店は普通に目にすることが多いから、ということが一因としてありそうだ。
いくつか選択肢がある場合、どうしても一番なじみのものを選ぶという傾向は、実際にありそうな気がする。そうすると、まずい、は言い過ぎでも本場より味の落ちるお好み焼き屋であっても、本場に対して多少なりは貢献しているといえそうだ。
そう考えると「佐世保バーガー」のお店が全国に乱立する状況は地元としては必ずしも悪いとは思えないのだが。何しろ「広島風お好み焼き」に比べれば「佐世保バーガー」の知名度などまだまだ下。とりあえず存在を知ってもらわないことに始まらない。
美味ければしめたもの。中には「本場のも食べてみたい」と連休の旅行先の候補に佐世保をリストアップしてくれる人も出てくるだろう。それほどでもなくても、向こうのお店負担で「佐世保バーガー」の広告出してもらったと思えばある程度の経済効果はある。テレビや雑誌で見た(読んだ)という意味での「知っている」と実際食べさせてくれるお店が近所にある、という意味での「知っている」とでは身近に感じる度合いも違うし、
まあ中にはそこで食べた人の「佐世保バーガー」のイメージを暗黒に塗り上げるようなお店があるかもしれないが(汗)いくらなんでもそういう店は早晩淘汰されるだろう。
結局のところ、流行っているものに競合店が群がるのは商売としてはある意味「当たり前」のこと。規制を求める声がある一方で、こういったものを既得権益者の利益を守るための一方的な規制と感じる声なき声があることも忘れてはいけないと思う。
ランキング参加中です よろしければクリックお願いします。 |