これはたしか数年前にどこかの旅先で買って、結局読まずに放置していたもの、だと思う(うろ覚え) 最近の小説と思って読んでみたら結構昔、平成2年刊行の作品だった。喫茶店で電話を取り次いでもらうシーンにものすごく時代を感じたり。
喫茶店やレストランでお客への電話を取り次ぐ、というのは昔の推理小説を読んでいると当たり前のように出てくるシーン、松本清張とかだと読む前から昔の作品という固定観念があるのでまったく違和感ないのだが、東野圭吾はリアルタイムで活躍している作家、というイメージがあるので、逆にものすごく時代がかって感じた。平成も昭和から変わってすぐの頃はケータイなんてなかったんだな、と妙なところで感心したり(^^;
閑話休題、東野圭吾の初期の謎解きもの短篇集。大掛かりなトリックなどはないが、一捻りした謎解きの妙が楽しめる。
肩のこるような作品ではないので、病院の待ち時間にはちょうどいいが、読みやすすぎて2日で読み終えてしまった(^^; 待ち時間が長すぎるのが問題なのだが
探偵役が謎解きマシンのようで、人間的な魅力がない・・・ と批判される推理小説はけっこう多いが、この小説の探偵コンビは意図的に個性を消し、没個性な謎解きのスペシャリストに徹しているのが特徴。
抑制的な表現が逆に、「依頼人の娘」で見られるあえて探偵としてのルールを破る解決に人間味を感じたり、悪女の奸計に利用された「探偵の使い方」のラストで垣間見せる、不気味なまでのプロフェッショナルの凄みといった印象的なシーンを作り上げているのが面白い。
帯の紹介を読むと大富豪が所有する孤島の別荘で起きた連続殺人・・・ みたいな浮世離れした設定が多そうだが、読んでみると上流階級とはいえ、そこまで大時代的な作風のものは少ない。考えてみるとこの作品発表時はバブル崩壊してまもなくの頃、前述の「探偵の使い方」でも探偵本人が「会員のレベルを下げすぎた」と述懐しているけど、クールな仕事ぶりとは裏腹に、不景気の影響で実入りのいい仕事が減って、探偵倶楽部の内情はけっこう大変だったのかも(^m^)