最近少々重めの小説ばかり読んでいたので、あんまり肩のこらなさそうなのを。と思って買ってみた。
高校を舞台とした、いわゆる「日常の謎」系の青春ミステリ。謎解きの要素はあるが、謎が日常的すぎてミステリ要素はあまり強く感じない。
9章からなるが、すべての章に謎解きが含まれているわけではない。33年前に高校で起きた事件の真相と「氷菓」という題名を付けられた文集の真相を追うメインストーリーに、小ネタ的小さな謎解きが挟まれている感じで、日常の謎系小説に多い連作短編集と長編の中間、と言った印象。。
事件といっても殺人どころが暴力沙汰が起きるわけでもなく、不良に絡まれることすらなく、学園モノにありがちな恋愛要素もほとんどなし。
昔の(赤川次郎とか)の「青春ミステリ」を想像すると拍子抜けするくらい穏やかな日常を描いて小説として成り立ち、しかもベストセラーとなりアニメ化までされるということに時代の流れを感じた(^^;。とか言いつつ、この緩めの空気感は嫌いじゃなかったりする。
省エネ主義の主人公奉太郎を始め、文化部メンバーのキャラが立っているのも今時か。ただこの辺りはいまひとつ受け付けなかった。
あまりに人工的というか、登場人物がそれぞれのキャラを「演じている」かの如き感じがして、
謎解きだが、奉太郎のカンの良さが目立つ感じで、論理的に謎を解いてくような緻密さは感じない。あと、唸るほどの意外性はないが、あっさり解いたように見せてからあと一捻り入れて、33年前の事件悲劇性を強調しているのはうまい感じ。
こういう形で高校生活を終わらされたら、そりゃどこかに自分の断腸の思いを表したくなるだろうな。大げさな悲劇じゃないけど、日常的に誰にも起こりうるような痛みをラストに持ってきたのは、物語の雰囲気とのバランスがあっていてよかったように思う